目的:前期高齢者の筋肉量と体脂肪率が歩行速度に及ぼす影響を明らかにし,歩行速度低下のリスク因子の予防を検討する.方法:前期高齢者の男性197人,女性203人に筋肉量,体脂肪率と5m歩行速度を測定した.骨格筋指数(SMI)を男性6.87kg/m
2,女性5.46kg/m
2以下,体脂肪率(%BF)を男性25%,女性30%以上,歩行速度を下位四分位(男性1.163m/s,女性1.250m/s)以下で2群にし,独立変数に低SMIと高%BF,従属変数に低歩行速度,共変量に年齢,処方薬剤多数群,男性のみさらに慢性疾患重複あり群,糖尿病を投入し男女別に多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:低SMI群は男性39人(19.8%),女性48人(23.6%),高%BF群は男性103人(52.3%),女性126人(62.1%)で,低SMIかつ高%BF群は男性25人(12.7%),女性16人(7.9%)と男性が多かった(p<.001).低歩行速度群は男性52人(26.7%),女性60人(29.6%)で,高%BFによるオッズ比は男性2.4(p=.015, 95%CI1.2-4.9),女性2.2(p=.032, 95%CI 1.1-4.6)であった.低SMIによる影響は男女とも有意性を示さなかった(男性p=.367,女性P=.678).結論:前期高齢者において男女ともに歩行速度低下に対し高体脂肪率がリスク因子となる可能性が示唆された.
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