日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
訪問看護業務内容の難易度順位からみた看護の構造と利用可能性
島内 節木村 恵子亀井 智子藤谷 久美子内田 恵美子川越 博美佐々木 明子福島 道子高階 恵美子丸山 美知子
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2000 年 2 巻 1 号 p. 17-24

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抄録

目的:訪問看護実践における看護業務について訪問看護業務分類を作成し,知識的・判断的・技術的専門性からみた訪問看護の難易度を明らかにする.さらに,明らかになった業務難易度の利用可能性を検討する.方法:調査対象は訪問看護の経験が5年以上で,エキスパートナースとして研究メンバーが全国から選んだ訪問看護婦および保健婦118名であり,訪問看護業務の難易度に関する質問紙調査を郵送法により実施した.本研究において作成した訪問看護業務分類は大分類(14項目),中分類(45項目),小分類(130項目)より構成された.小分類には看護方法として「観察・判断」,「ケア実施」,「利用者・家族教育」,「物品の選定・調達・準備」を設定し,総項目数は491項目であった.難易度は高度専門的知識・技術から基本的知識・技術までの3段階で得点化し,平均得点が高いほど難度が高いと設定した.結果:1)有効回答数は104名(88.1%)であり,調査対象看護職の平均年齢は46.6歳であった.2)大分類14項目における難易度は以下の4群に区分された.難度の最も高い群は「ターミナル状態のケア」,「認知の問題のケア」であった.2番目に難度が高い群は「医療処置のケア」,「コミュニケーションの問題のケア」,「家族・介護者の問題のケア」であった.3番目の群は,「心理・社会的問題のケア」,「バイタルサインズ・問題兆候のケア」,「居住環境のケア」,「睡眠の問題のケア」,「摂取と排泄問題のケア」,「社会資源利用の援助」,「身体機能・日常生活動作のケア」であった.4番目の群が基本的な知識と技術があればできる業務として「薬剤使用と検査のケア」,「皮膚と清潔問題のケア」であった.3)看護方法別にみた難易度の全体平均得点順位は(1)「利用者・家族教育」,(2)「物品の選定・調達・準備」,(3)「観察・判断」,(4)「ケア実施」の順であった.この結果は施設内看護と異なる訪問看護の特徴を示している.以上の結果は次の2点に利用可能である.第1は現場の運営管理への利用可能性であり,事例の難易度とスタッフ条件から受け入れ許容量の明確化,熟練度に応じた事例分担,勤務スケジュール管理等に生かされる.第2に教育プログラムへの利用可能性である.業務内容と看護方法の難易度に基づき,教育内容やその順序,強調・強化すべき点が明確になったといえる.

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© 2000 一般社団法人 日本地域看護学会
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