急速な人口の高齢化が進行する日本の現状においては,生活習慣病の予防活動にますます重点が置かれていく.その中でも,まだ疾病・異常率の低い20歳代の若者の生活習慣をより健康的な方向に導いていくことは特に重要であると考える.本研究は,静岡県北西部の4市町村の18歳から29歳までの若者1,153人に質問紙による調査を行い,602人より有効回答を得たものを対象に,保健行動と精神的健康状態の実態およびその関係を把握することを目的とした.主な質問項目は保健行動として,睡眠・喫煙・体格・飲酒・運動・朝食の摂取・間食の摂取・健康診断受診の8項目とし,精神的健康は日本語GHQ12項目版を使用し,以下の結果を得た.(1)保健行動の8項目中4項目を実施しているのは59.8%であった.(2)実施率の低い項目は男女ともに「運動実施群」で,男性33.3%,女性21,3%,「間食習慣のない群」で男性46,5%,女性19.0%,男性の「喫煙習慣なし群」44.1%であった.(3)保健行動に男女差があるものは,喫煙,朝食摂取,間食の習慣,飲酒,健診の定期受診,保健行動の実施総数であった.(4)喫煙習慣のあるもののうち,習慣化した年代は「中学」3.9%,「高校」27.0%であった.(5)主婦・フリーター・自営業などの職業に就いているもので,定期的に健康診断を受診している割合は27.1%にとどまった.(6)GHQの高得点群(精神健康不良)は3/4点をcut-off pointにしたとき,全体の39.7%であった.また,男性より女性のほうが有意に得点が高かった.(7)GHQを従属変数としたロジスティック回帰分析では,朝食の摂取・自覚的適正体格・適正な睡眠時間が有意な項目として抽出された.以上のことから,本対象地域の若者に対しては運動・間食の摂取,加えて,男性には喫煙に関すること,自営業や主婦へは健康診断の受診への働きかけが必要であるといえる.また,喫煙については小学校段階からの教育が必要であろう.健康相談などでは,女性,朝食の不定期摂取や摂取しないもの,体格を太りすぎやせすぎと感じているもの,睡眠時間が短いものについては精神面の健康状態についても配慮しつつ,注意深く面接を進めなければならないといえよう.
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