日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
高齢夫婦のみ世帯において認知症高齢者を介護する配偶者の経験
小林 紗織白谷 佳恵田髙 悦子伊藤 絵梨子大河内 彩子有本 梓
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2018 年 21 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

目的:高齢夫婦のみ世帯において認知症高齢者を介護する配偶者の経験を質的帰納的に記述し,今後の支援への示唆を得ることを目的とした.

方法:研究参加者は,首都圏在住の高齢夫婦のみ世帯において,認知症高齢者を在宅介護している配偶者であり,本研究の趣旨を理解し,研究協力への同意が得られた5人である.方法は,質的帰納的研究であり,インタビューガイドを用いた半構造化面接および認知症カフェでの参加観察によりデータを収集し分析した.なお,本研究は横浜市立大学医学研究倫理委員会の承認を得て実施した.

結果:高齢夫婦のみ世帯において認知症高齢者を介護する配偶者の経験について,【義務と恩返し】【翻弄と当惑】【新たな関係づくり】【模索と獲得】【悲嘆と適応】【孤独と支え】【世界観の広がり】の7つのカテゴリーが抽出された.すなわち高齢者のみ世帯において認知症高齢者を介護する配偶者は,自身の老いとつきあいながらも介護者として生き,介護を取り巻く社会問題について関心をもって活動し,介護を通して自身の世界観が広がっていく経験をしていた.

考察:高齢夫婦のみ世帯において認知症高齢者を介護する配偶者への支援として,介護者の介護経験,すなわち翻弄や悲嘆にとどまらず新たな関係づくりや模索を通して介護生活に適応し,さらには社会に向けて活動を広げていくという経験を重んじた,介護者の気持ちに寄り添うかかわり,また介護者をサポートするための地域における体制づくりが必要である.

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© 2018 一般社団法人 日本地域看護学会
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