2018 年 21 巻 1 号 p. 4-13
目的:産業保健師が保健事業評価を行う際に必要な専門能力を明らかにすることを目的とした.
方法:産業保健師経験をもつ看護系大学教員10人に,「実践で行っていた保健事業評価の内容や流れと留意点および必要と感じた専門能力」「教員の立場で保健事業評価に必要と考える専門能力」をたずねた(以下,教員インタビュー).教員インタビューの結果について,実践を行っている産業保健師7人にフォーカスグループインタビュー(以下,FGI)で,実践の立場からの妥当性・追加意見をたずね,最終結果に反映させた.
結果:教員インタビュー対象者の産業保健師経験は平均10.4年,教員経験は平均9.0年,FGI対象者の実践経験は平均18.4年であった.分析結果から《現状把握に基づく評価計画の立案》《評価に活用するための情報収集》《多角的なデータ分析と事業成果・健康施策全体を結びつけた意味づけ》《関係者へのわかりやすい成果の提示とモチベーション向上支援》《評価活動全体の基盤》の5つのカテゴリーが作成された.《評価活動全体の基盤》には,費用対効果や経営の認識が含まれた.
考察:産業保健師が保健事業の成果や意味づけを人事・労務担当者等の職場関係者に伝えることで,関係者の動機づけが強化され,活動の推進につながると考えられた.また,費用対効果や経営の観点を認識することで,それらを踏まえた評価活動が可能となり効果的な評価が実施できると推察された.