目的:子どもの発達障害の特性を指摘されてから専門機関の継続的な支援を受けるまでの母親の子育てにおける体験を明らかにすることにより,子どもの発達障害の特性を指摘された母親への保健師の支援のあり方について示唆を得ることである.
方法:A市在住の発達障害のある子どもを養育する母親7人を対象に,子育てにおける体験の具体的内容について半構造的インタビューを実施し,質的帰納的に分析した.
結果:母親の子育てにおける体験として【発達障害の特性を指摘されたときのどん底への落ち込み】【発達障害が不確かななかでの苦悩】【発達障害への不安を1人で抱える孤独】【これまで行ってきた子育てへの自責】【発達障害の特性への対応の困難さによる心身の疲弊】【発達障害にとらわれて子どもを受け入れられない辛さ】【子どものために発達障害に向き合っていこうとする思い】【専門機関の支援につながったことによる落ち着き】【子どもの成長の実感による子育てへの自負】の9つのカテゴリーが生成された.
考察:特性を指摘された後,母親はどん底に落ち込み,母子のアタッチメント形成にも影響を与えていたことから,特性の指摘においては母親との信頼関係を築き,親子の伴走者として継続的に支援し,子どもへの対応方法を獲得できるようにする必要がある.これらの支援により母親の苦悩や孤独,アタッチメント形成への阻害も緩和されると考えられる.