2018 年 21 巻 2 号 p. 65-74
目的:本研究は愛着形成に関わる経験に焦点を当て,乳幼児を育てる母親自身が認識している幼少期の被養育体験を明らかにすることを目的とした.
方法:乳幼児を育てる母親13人に半構成的面接を行い,データを質的に分析した.
結果:母親の被養育体験の認識は【被養育体験への満足感】と【被養育体験への未充足感】の2つの側面で構成された.【被養育体験への満足感】は〈私の喜ぶことをしてくれた親の心づかい〉〈認められているという肯定感〉〈親しみに満ちた雰囲気のなかで育った安堵感〉〈見守られ,困っていることに対応してもらえたという信頼感〉〈子育てに前向きな親の姿勢〉が示された.【被養育体験への未充足感】は〈不快な気持ちに気づいてもらうことへの諦め〉〈いつも叱られていたという感覚〉〈私のペースに寄り添ってくれなかった〉〈きょうだいに対する態度への不公平感〉が示された.
考察:母親自身の愛着形成において満足感と未充足感の2つの側面の被養育体験を認識していることが明らかになった.子育て中の母親が,自らの被養育体験の満足感を認識することは,子どもへの愛情や肯定的な関わりにつながると考えられる.親支援において,母親自身の子育てへの自己肯定感を向上させることが必要である.