日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
精神障がいを抱えながら育児を継続している親の経験
池谷 実歩蔭山 正子
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2020 年 23 巻 3 号 p. 13-22

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抄録

目的:地域で暮らす精神障がい者は今後も増加が見込まれる.本研究は,精神障がいを抱えながら育児を継続している親の経験を明らかにすることを目的とした.

方法:18歳未満の子どもをもつ精神障がい者である母親8人と父親3人にインタビューガイドに基づいた個別の半構成的面接を行い,精神障がいを抱えながら育児を継続している親はどのような経験をしたかという視点で,逐語録を質的記述的に分析した.

結果:親は服薬調整や育児の忙しさによって病状が不安定になった.しかし,病状とうまく付き合う方法を模索し,【妊娠・育児中の病状コントロールのむずかしさを乗り切る】ようにしていた.また,家族やママ友などから孤立したり,「病気をもちながらの育児」に対する支援が得られず,【親として孤立を味わうが理解者と出会い救われる】経験をした.親は病気の遺伝や家事がこなせないことなどによる【病気が子どもに与える影響に苦しみながらも自分の経験を生かした育児をする】ようになった.そして【親となり生きることに前向きになる】経験をし,育児をしながらの社会参加を目標とした.

考察:親は周囲から孤立しがちであるため,他の精神障がいをもつ親や地域とのつながりをもつことが重要であると考えられる.また,支援を得られずに孤立していたことから,支援する際は,自ら支援を求めることを苦手とする親からの相談を待つだけではなく,保健師等から連絡をとっていく必要があると考えられる.

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© 2020 一般社団法人 日本地域看護学会
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