日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
26 巻, 3 号
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原著
  • 大比叡 和子, 尾﨑 伊都子, 門間 晶子
    2023 年 26 巻 3 号 p. 4-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,1歳6か月児健康診査における保健師の問診技術を明らかにすることである.

    方法:自治体に勤務する母子保健業務が経験豊富な保健師に対し,インタビューを行った.インタビュー内容は,問診での親子に対する着眼点や,問診を進める際の工夫点とした.分析は質的記述的方法を用いて行った.

    結果:研究協力者は,自治体に勤務する9人の保健師とし,保健師経験年数の平均は23.0年(SD=6.5),このうち母子保健分野での経験年数の平均は19.8年(SD=5.4)であった.1歳6か月児健康診査に来所した親子への保健師の問診技術として【第一印象や問診票に記載されている内容から,さらに詳しく把握するべき情報に目星をつける】【母親の表情,口調から健康問題にどこまで深く立ち入るかを見極め,問診後の対応を方向づける】等,8個のカテゴリー,31個のサブカテゴリーが生成された.

    考察:保健師の問診技術は,支援の始まりとなる関わりのきっかけをつくり助言を行うとともに,特に継続支援が必要な人には会話を通して母親の課題に対する気づきを促し,問診で立ち入るラインを見極め,個別保健指導を含む次の段階への方向づけをするものであった.

  • 深山 華織, 河野 あゆみ
    2023 年 26 巻 3 号 p. 13-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー

    目的:わが国では,家族の介護を理由とした離職者が増加し,介護者が就労継続できるための支援体制の構築が課題である.そこで本研究では,就労介護者の仕事と家庭役割間における葛藤と就労継続への意思との関連を明らかにする.

    方法:対象者は就労介護者3,000人とした.郵送で無記名自記式調査を実施し,696人(有効回答率23.2%)を分析対象とした.調査内容は,基本属性や仕事とワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)尺度(WIF:仕事から家庭への葛藤,FIW:家庭から仕事への葛藤),退職・転職・就業形態変更への意思とした.

    結果:対象者の平均年齢は57.2(SD=8.8)歳で,女性が79.3%であった.退職,転職,就業形態変更の意思がある者は,それぞれ36.2%,24.4%,41.4%であった.ロジスティック回帰分析の結果,WIF高群は低群より,退職の意思(OR=1.57,95%CI=1.09~2.27),転職の意思(OR=2.25,95%CI=1.47~3.45),就業形態変更の意思(OR=2.84,95%CI=1.97~4.10)があった.また,FIW高群は低群より退職の意思(OR=1.52,95%CI=1.06~2.17),転職の意思(OR=2.37,95%CI=1.57~3.58),就業形態変更の意思(OR=2.14,95%CI=1.51~3.04)があった.

    考察:WFCが高い就労介護者は離職意思があり,就労継続が困難となる可能性があることが示唆された.

研究報告
  • 佐藤 太地, 井口 理, 石田 千絵
    2023 年 26 巻 3 号 p. 21-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー

    目的:地域包括支援センターの看護師が行う地区活動の特徴を明らかにする.

    方法:委託型地域包括支援センターで地区活動を実践する看護師6人に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.

    結果:分析の結果,7つのカテゴリーが抽出され,【住民がその人らしく暮らせる形を模索する】【住民の困りごとに早期に気づける環境をつくる】【住民の悩みを解決できる人や場所を探す】【多職種とともに在宅生活の継続に向けた資源をつくる】【地域課題への取り組みを住民とともに検討する】【住民同士のピアサポートの機会を設ける】【介護予防に取り組む住民活動を支援する】が明らかになった.

    考察:地域包括支援センターの看護師は個別事例のニーズと支援を起点として,個人が望む生活を体現するべく,地域への理解を深め,住民や関係職種と協働しながら在宅生活を支えられる地域づくりを推進していた.個別事例に向き合うなかで地域を支援対象とする必要性を認識していたが,個人の経験や環境により差があると考えられるため,地区活動の視点を身につける仕組みづくりの必要性が示唆された.

  • 飯塚 瑞季, 大澤 真奈美, 行田 智子
    2023 年 26 巻 3 号 p. 31-42
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー

    目的:乳幼児虐待予防に向けて市町村保健師が支援の必要な「気になる親子」を判断するためのアセスメントの視点を明らかにし,母子保健活動への示唆を得る.

    方法:A県内の自治体に所属している経験9年以上かつ母子保健の経験5年以上の市町村保健師10人を対象に,インタビューガイドを用いた半構造化面接を行った.Berelson B.の内容分析を参考にデータを質的帰納的に分析した.

    結果:アセスメントの視点として18カテゴリーが形成され,アセスメントした対象により母親・父親・子どもの3つの視点に分類できた.母親に対しては【他者への関わりで不器用さやあいまいさ・乱暴な態度をみせる】など12カテゴリー,父親に対しては【家事や育児へ非協力的な行動をとる】など2カテゴリー,子どもに対しては【他者とのやりとりの難しさやほかの子とは違う距離感がある】など4カテゴリーであった.Scott WAの式による3人の一致率は88.6%以上であり,カテゴリーの信頼性を確認できた.

    考察:市町村保健師はアセスメントの視点を,母親に対しては母親の発言や子どもへの関わり,暮らしぶりなどの観察から把握し,父親に対しては母親の発言から父親の様子を推測して把握し,子どもに対しては母親の発言や子どもの観察から把握していた.またアセスメントの視点は市町村保健師が,親子との関わりで把握し支援につなげた経験を通してつくりあげた自身に内在する基準となるもので,それに照らし直感的に判断していると考えられた.

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