日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
行政保健師が職務中に経験している地域住民からの暴力の実態
─保健師の暴力への認識と感情・思考・対処をもとに─
横田 恵佐々木 直美
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2025 年 28 巻 1 号 p. 22-30

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抄録

目的:行政保健師が職務中に経験している地域住民からの暴力の実態と暴力を受けた際の保健師の認識,感情や思考,対処を明らかにする.

方法:A県に所属する県保健師を対象とし,無記名自筆式質問紙調査を行った.暴力を受けた経験については被害を受けた個人により暴力への認識が異なることから,まず暴力の定義を説明し,具体的な暴力行為20項目についての過去1年間の経験の程度を確認したうえで,その際の保健師の暴力への認識や感情,思考,対応について回答を求めた.

結果:86人に質問紙を配布し64人から回答が得られた.過去1年間に地域住民からの暴力を経験した保健師は約7割であった.その内,住民から受けた暴力を暴力として保健師が認識していた程度,暴力の種類,暴力を受けた場面についてχ2検定等を行った結果,有意な関連が認められ,多くの保健師が暴力と認識していないこと,暴力の種類は「言葉の暴力」「いやがらせ・威嚇等」,暴力を受ける場面は「電話相談」が多いことが明らかになった.

考察:保健師は,職務の特性上被暴力のリスクがあることや暴力への認識や対応のための判断の背景にある看護職特有の感情規則の影響を考慮したうえでの,事前のリスクアセスメントと場面に応じた未然防止策の検討,暴力発生時には対応した保健師の心理的影響へのサポートや再発防止策の検討といった職場内での情報共有と協議の場が必要と考えられた.

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