2025 年 28 巻 2 号 p. 4-12
目的:本研究は,地域で暮らす独居高齢者のACPに関連する民生委員の体験を明らかにし,民生委員との連携に関する示唆を得ることとした.
方法:A県A市の民生委員および元民生委員9人に,人生の最終段階における医療・ケアの検討につながる独居高齢者の思いや意向を把握していく過程と,その過程で抱いた考えや思いについて半構造化面接を行い,その内容を質的記述的に分析した.
結果:独居高齢者のACPに関連する民生委員の体験は,〖関係性を構築する〗〖対象者の主体性を尊重する〗〖真の意向をとらえようとする〗〖困難感を抱く〗〖立場を踏まえて適切な人に委ねる〗で構成された.
考察:民生委員は,専門職とは異なる視点や立場から独居高齢者のACPに関する貴重な情報を提供し,対象者の意向理解に寄与しうる存在である.一方で,民生委員がACPに関わるうえでは,心理的負担,専門知識の不足,個人情報の収集と共有に関する課題が明らかとなった.そのため,地域に暮らす独居高齢者のACP推進においては,専門職が主体となり,専門職は民生委員のもつ地域に根差した視点や信頼関係の強みを積極的に活かし,その専門的知見によりACPに関わる活動を補完していく連携体制が不可欠である.