抄録
本研究の目的は,長期慢性疾患である橋本病患者の基本的属性(年齢,家族形態,職業,罹病期間,治療状況,症状の訴え)と,ソーシャルサポートおよびセルフ・エフィカシーとの関連性を明らかにすることである.調査対象者は,浦河保健所管内4町在住の北海道特定疾患治療研究事業における橋本病認定者で在宅療養中の225名である.調査方法は,対象者の基本的属性とソーシャルサポート,およびセルフエフィカシーに関する質問紙による郵送調査である.分析対象者は,女性129名(92.8%),平均年齢は54.7歳,有効回答数139名(有効回答率88.5%)であった.ソーシャルサポートとセルフエフィカシーの尺度は金らのもの(1996)を用いた.1.ソーシャルサポートの総得点では,年齢,家族形態,症状に有意差(p<0.05)が認められた.情動的サポートでは,基本的属性のすべての項目に有意差はなく,行動的サポートでは,年齢(p<0.05),家族形態(p<0.01),罹病期間(p<0.05),症状(p<0.01),に有意差が認められた.下位尺度では35〜49歳,単身,罹病期間が3年以下,症状なしの人の行動的サポート得点が低かった.セルフエフィカシーの総得点では,基本的属性のすべての項目に有意差は認められなかった.疾患に対する対処行動の積極性では,職業で有意差(p<0.01)があり,定職者の得点が低く,健康に対する統制感では,性別(p<0.05),症状(p<0.01)に有意差が認められ,男性と症状ありの人の得点が低かった.2.ソーシャルサポートとセルフエフィカシーとの間には,正の高い相関関係が認められ,特に情動的サポートと行動的サポートは,疾患に対する対処行動の積極性と高い相関間係が認められた.今後,橋本病患者の年齢,家族形態,職業,症状を考慮した保健サービスの提供が求められている.橋本病患者のセルフ・エフィカシーを強化するためには,ソーシャルサポートを高めることが先行要件であり,その際,個別援助に加えて,セルフ・ヘルプグループ活動の推進など地域の生活に根ざした看護活動を作り出すことが求められている.