抄録
福井県K市において,1992年度に社会福祉協議会が中心となり県保健所と市の保健婦,市内の精神科病院の医師,大学研究者が協同で,在宅高齢者全員を対象とした生活と健康に関する実態調査を実施した.その時に痴呆症と診断された201名を対象として,4年後の1996年度に追跡調査を実施した結果,家に引きこもりがちな痴呆症高齢者の身体的・心理社会的機能の活性化と生活満足感の増大,および痴呆症高齢者とその家族を支援する地域ネットワークの必要性が認識された.1997年度に,保健所保健婦が調整役となり,市保健婦と社会福祉協議会,研究者とが協働して,在宅痴呆症高齢者のための地域リハビリ教室を企画した.市内医療機関,福祉施設の介護職員,地区民生委員,ボランティア等に協力を依頼し,市内2か所の公民館でそれぞれ約15名ずつの参加者を対象にして10か月間教室を運営し,試行的に活動成果を評価した,その結果をふまえて,1998年度に回数を増やして教室を実施し,成果を評価した.教室に参加した高齢者には,心理社会的機能の改善を主とした成果が,また保健・医療の専門職には,他の職種の専門性への理解,痴呆症高齢者の見方,関わり方の変化などの成果がもたらされた.1999年度以降,教室はK市の機能訓練事業として位置付けられ,市内外に新たな活動が波及した.本報告では,地域リハビリ教室の企画と運営,成果の評価,および活動費の獲得,事業化の過程と,そこでの保健・福祉専門職,地域保健福祉活動員,研究者,ボランティアの協働について報告する.