日本地域看護学会誌
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保健活動における地域の看護アセスメントの課題 : 保健婦の認識をとおして
佐伯 和子和泉 比佐子加藤 欣子平野 憲子
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2001 年 3 巻 1 号 p. 142-149

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抄録
目的:保健婦の地域の看護アセスメント力の向上を図るために,その認識を明らかにすることを目的とした.方法:対象は実習指導を担当した保健婦で,地域を把握していると考えられた3年以上の地域での活動経験のある者で,協力の承諾が得られた4名に半構成面接を行った.面接は了解を得てテープに録音し,逐語記録を作成した.データの分析は,グラウンデットセオリーを参考にして,中核となる認識を構造化し,妥当性と信頼性を検討した.結果:地域を看護アセスメントすることの目的と必要性は,《活動の根拠》を明確にし,《計画的な業務遂行》とチーム内での《ニーズの共有》があげられた.アセスメントの内容では,《全体的客観的な地域の把握》,特に住民の《生活実態の把握》であり,一方,《保健事業の課題》を明らかにすることという認識もみられた.しかし《系統的なアセスメント枠組みは不明確》であった.データについての考え方と方法では,現場の実際や実感を重視する《現場主義》がみられ,《住民の生の声が大切》で,《個から地域へ》と発展させようとする姿勢があった.データ化の段階では,《系統的なアセスメント能力の不足》,《質的データの未活用》,《量的データ処理の弱さ》がみられた.現場で簡便に利用できる《アセスメントツールへの期待》がみられた.アセスメントを実施することによる結果は,《仕事を実感》し,住民の《ニーズにそった事業》の実施,《施策化への参画》の可能性,《円滑なチームワーク》につながると考えられていた.活動におけるアセスメントの位置づけは,《重要性大》であるが,《非日常的な業務》,《困難な作業》とみなされていた.さらに,《地区診断と地域の看護アセスメントに隔たり》があると認識されていた.結論:保健婦の地域の看護アセスメント能力を向上させるためには,地域の看護アセスメントと地区診断との考え方を区別し,地域全体のアセスメントと事業実施のためのアセスメントの違いを理解して,アセスメントを活用することが重要である.また,地域の看護アセスメントの困難性の解決のためには,アセスメントの方法論の確立が期待される.
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© 2001 一般社団法人 日本地域看護学会
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