日本地域看護学会誌
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1歳6か月健診への母親の期待 : これから期待される健診のあり方
福田 由紀子
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2001 年 3 巻 1 号 p. 156-162

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抄録
目的:本研究は,母親の1歳6か月健診受診の目的,満足度,児以外の不安内容の実態を調査し,その地域のニーズと内容,支援のあり方について評価,検討することである.研究方法:1998年9〜11月までにN保健所管内で行われた1歳6か月健診(健診と略す)に訪れる乳児の母親240人にアンケート調査,不安内容による健診受診の目的と満足度の分析を行った.結果および考察:育児上の不安「あり」が157人(65.4%),「全くなし」が83人(34.6%)であった.育児不安の内容では,「児についての不安」をもっている母親が116人(73.9%),「児以外の不安」をもっている母親が41人(26.1%)であった.具体的な内容は,児については「便秘がちである」「湿疹がひどい」などの身体面での育児不安が多く,児以外のものでは,「育児をすることで自分の時間や心にゆとりがもてない」という母親自身の心理面での心配が多く見られた.健診の期待については,「子どもの健康や発達を確認するために行こうと思っている」という母親は,234人(97.5%)で最も多く,次いで「子育てで迷ったことや心配なことを相談しようと思っている」という人が,105人(43.8%)であった.母親の不安の内容とその満足度については,児以外についての不安をもつ母親たちは,健診において「子育てで迷ったことや心配なことを相談しようと思っている」と答えた割合が児についての不安をもっている群に比し有意に低かった.健診に満足している母親たちは「心配や不安の解決のきっかけをつかめた」,「自分の育児方法を認められ,自信がついた」と答えている割合が有意に高かった.これより,現在の1歳6か月健診は児についての不安解消にはある程度母親に評価されているが,母親の児以外の不安に対する配慮がまだ不十分であることを示唆している.結論:1.1歳6か月健診を,ほぼ全員の母親が子どもの健康や発達を確認するために行うと認識していた.2.1歳6か月健診時における母親の不安の内容とその満足度についての検討では,育児について不安をもつ母親の26%が児以外についての不安をもっていた.3.母親のニーズを地域ごとに吸い上げる調査研究の推進と,母親自身を対象としたケアする場を構築する必要性が示唆された.
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© 2001 一般社団法人 日本地域看護学会
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