抄録
目的:これまで育児は,育児不安,育児負担感などのネガティブな部分に着目・評価されることが多かった.しかし21世紀の育児支援体制には,育児のポジティブな側面を促進する要因の検討が必要であるため,本研究では「親性」という概念に着目し,育児状況を評価する上での有用性を文献的に検討し,尺度の関発を試みた.方法:大阪市T保健センターの母子管理票より抽出した生後1か月〜3歳半までの第1子をもつ母親649名を対象に,無記名の自記式質問紙を郵送し,そのうち397名(61.2%)を分析対象とした.尺度の信頼性にはCronbach α係数,妥当性には表面・内容妥当性,構成概念妥当性,基準関連妥当性を検討した.結果:17項目のうち回答に著しい偏りのあった2項目を除外し,15項目すべてに回答があった368名を対象に因子分析を行った結果,第1因子の寄与率が他因子と比べ大きいため,1因子構造であるとみなした.15項目の信頼性係数はα=0.78であった.親性と母親の年齢,子どもの年齢,子どもの数,母親の就業,父親との関係性の関連を検討した結果,父親との関係性のみに有意差がみとめられた.考察:15項目からなる「親性」尺度を検討した結果,育児状況を評価する指標の1つになる可能性は示唆された.しかし尺度の使用にあたっては,1)父親・母親の比較,2)同一人物による親となる前後での縦断的研究,3)地域間差による交差妥当性などの検討課題が明らかになった.