2025 年 61 巻 1 号 p. 163-168
一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎)の隔膜の自然穿破は非常に稀とされている.隔膜の自然穿破の際には,MD双胎に特有の合併症に加え,臍帯相互巻絡にも注意する必要がある.この度MD双胎の隔膜の自然穿破の症例を経験した.症例は27歳,G1P0,自然妊娠,MD双胎のため妊娠9週で当院を紹介受診し,超音波検査でMD双胎であることを確認した.妊娠19週の超音波検査で臍帯相互巻絡を指摘され,隔膜の自然穿破と考えられた.妊娠24週にselective IUGR type 3と診断し,臍帯相互巻絡もあることから妊娠33週で選択的帝王切開術の方針とした.妊娠32週3日,胎児心拍モニタリングでFGR児に変動性一過性徐脈を頻回に認めたため,胎児機能不全に対して緊急帝王切開術を施行し,生児を得た.術中に臍帯相互巻絡を確認し,胎盤に隔膜遺残を認めた.MD双胎の隔膜自然穿破については報告が少なく,今後の知見の蓄積が期待される.