日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
産業看護領域におけるアセスメントツールの開発
荒木田 美香子青柳 美樹梅津 美香上野 美智子佐々木 美奈子榎 悦子河野 啓子
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2002 年 4 巻 1 号 p. 112-119

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抄録

目的:産業看護活動に活用される情報は対個人に関するものから,所属する職場や組織に関するものまでと幅広い.産業看護におけるケアレベルの向上を目指すためには,対象者と環境の相互作用を系統的かつ包括的にアセスメントできるようなツールが必要であると考え,「産業看護領域におけるアセスメントツール」を開発することとした.方法:ツールの開発にあたっては北アメリカ看護診断協会(North American Nursing Diagnosis Association, NANDA)の「ユニタリーパーソン」の概念に基づくGuzzettaらのアセスメントツールを参考にした.産業看護職としての経験をもつ産業看護研究会のメンバー20名が「ユニタリーパーソン」の9領域を分担し,作成,検討を行った.基本方針は,(1)産業看護領域の対象,特に就労可能な労働者に焦点を当てる,(2)複数の反応領域であげられる項目は,より妥当性の高い一反応の領域で扱う,(3)対象者の上司や同僚からの情報も書き入れられるようにする,(4)改善すべき問題点のみではなく,ケアに活用できるような対象者や環境がもつ"強み"にも目を向ける,の4点であった.第一段階の案を作成後,焦点の異なる5事例に適用し,さらに改良した.結果・考察:Guzzettaらのツールに比較し,人間関係や知識,活動等に関する情報を扱う<関係>をはじめ6領域に職場における特殊性を強調する項目を設けた.一方,呼吸等の主に身体的な項目である<交換>は簡略化した.また,産業看護においては1人の対象者と長期間かかわりを続ける場合が多いという特徴を考慮し,人事・就労に関する情報,健康に関する履歴,看護診断歴の3領域からなる「Face Sheet」を追加した.このツールには,労働衛生5領域の活動やHANASARRI Occupational Modelの5観点がおおむね盛り込まれていると考える.今後,さらに信頼性の検討を重ね,職場集団についてのアセスメントツールの開発を行うことが課題である.

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© 2002 一般社団法人 日本地域看護学会
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