抄録
目的:第I報(日本地域看護学会誌,Vol.2,No.1)では,在宅療養中の介入困難な6事例と訪問看護婦を対象に,在宅ケアに必要なケアの要素と訪問看護婦の能力について,M.メイヤロフの「成長を促す」というケアの働きに焦点を当てて分析した.その結果,M.メイヤロフが述べているケアの要素8項目のほかに,新たに10の要素が見いだされ,とりわけ「意図的に関わる」「まき込まれる」「関わり続ける」「引き下がる」は在宅ケアに特徴的なケアの要素であった.しかし,その妥当性については,事例数が少なく明らかにできなかった.そこで本研究では,新たに事例を加え,在宅ケアに必要なケアの要素の妥当性について,ケア提供者としての看護婦の役割に焦点を当てて検討を行った.方法:対象は,平成11年度の事例検討会に出された介入困難事例5事例と訪問看護婦4名である.方法は事例に関することと,ケアを通しての事例と看護婦の変化について検討会で語られたものを,2名の研究者ができるだけ正確に解釈を加えず書きとめた.それを後日文章にして整理し,訪問看護婦に確認と修正を依頼した.その中からケア提供者としての看護婦の役割に関する記述を,内容分析の手法を用いて分析し,ケアの要素を抽出した.そして抽出されたケアの要素の妥当性について,第I報の結果と対比させ検討した.結論:抽出されたケアの要素は,「傾聴」「リズムを変える」「勇気」「まき込まれる」「関わり続ける」「調整」「力を強くする」「受容」「引き下がる」「専門的知識・技術の活用」「責任」「謙遜」「タッチング」「安全」「バランスをとる」」「意図的に関わる」の16項目である.「専門的知識・技術の活用」「責任」「安全」「バランスをとる」以外は,第I報でもケアの要素として見出されたものであった.そのうち,5事例に共通して抽出されたものは,「意図的に関わる」「調整」「力を強くする」「関わり続ける」の4項目であった.この4項目は本研究において,全事例に認められたことから,妥当性は高いと考えられる.そのうち,「意図的に関わる」は,将来を予測して関わることが求められる在宅ケアにおいては,ケアの前提にあると考えられた.そのため,第I報においてケアの一要素と捉えた「意図的に関わる」を,本研究では他の要素の上位カテゴリーとして位置づけた.また新たに抽出された「バランスをとる」は,家族の対処能力のアセスメント不足から,ニーズとケアにズレが生じた事例により抽出されたケアの要素であり,引き続き妥当性を検討していく必要性が示唆された.