抄録
ヘルスプロモーションを推進するために,保健婦は健康学習グループの支援を行っている,本研究では,保健婦の行う健康学習グループ支援の効果を明らかにすることを目的に,健康学習グループ参加者と健診受診者に対して保健行動および地域問題への関心,地域のサービス利用等について,2群の比較を行った.また,健康学習グループ参加者に対しては会の満足度や会の成果と感じていることを尋ね,健康学習グループの活動意義を考察した.調査対象は,保健婦の支援で設立され17年間継続した学習を重ねてきた健康学習グループ「大泉健康と老いを考える会」のメンバー「会員」と,対照群はA保健相談所の節目健診受診者「一般」である.「会員」では「一般」に比べ,塩分を控える,色の濃い野菜を食べる人の割合が3割以上多くなり有意な差となった.また歩く習慣がある人は会員約5割,一般約2割となり,運動をしていない人の割合は会員は約2割,一般は約5割となり有意な差があった.また,健診受診についても毎年受診は会員7割5分,一般3割5分となり有意な差があった.地域の健康問題についても「近所の人の健康状況が気になる」や「地域の同年代の人の健康状態が気になる」は会員約6割に対して一般約3割で有意な差となった.仲間の中で健康に関して話題にする人が会員約8割,一般約5割で有意な差があった.保健所の機能として知っていることでは,会員が一般に比べすべての項目で「知っている」とした人が多く,寝たきり老人の機能訓練,子育て不安に対しての相談,子育てグループづくりで有意な差となった.保健婦活動に期待したいことでは,一次予防や結核検診,健康学習グループ支援,健康学習グループ間のネットワークづくりで会員が一般に比べ高い割合を示し有意な差があった.会員の会への参加の満足度の平均は81点で,会の活動の成果では,「保健相談所が建て替えられて使いやすくなった」が約5割,「わかばの会での交流」「保健相談所が減らなかった」が約2割ずつであった.継続した学習を続けた健康学習グループの会員の保健行動は,より望ましい状況になり,地域の健康問題やサービス提供状況についての関心も高まり,地域の保健サービスにも会の活動が影響を与えたと認識できコミュニティエンパワメントがなされたと考える.したがって,保健婦が地域の中で行っている健康学習グループ支援の活動は,ヘルスプロモーションとして成果を確認でき保健婦の今後の活動の方向性を見出すことができたと考える.