抄録
目的:本研究はH市在住の在日中国人の生活習慣と身体的・精神的健康度の関連を明確にすることである.対象および研究方法:H市の日中友好会会員42名に自記式質問票を配布し30名(回収率71.4%)から,地区日本語学校参加者11名に配布し11名(回収率100%)から回答を得た.男女別状況は男性21名女性20名で,平均年齢は38.6歳(±11.9)(範囲21〜78歳)であった.質問項目は(1)個人的背景-学歴,職業,在日期間等,(2)健康状況-既往歴,現病歴,検診の有無等,(3)生活習慣-健康意識,喫煙,飲酒,BMI値,朝食の有無等,(4)精神的健康面はGHQ(General Health Questionnaire)12項目を使用.(5)食事については栄養素を12分類し,1日目安量で選択してもらった.研究結果:生活習慣では喫煙者が15.9%,飲酒者が34.1%と日本人と比較して良い状態で,BMI値は日本人とほぼ同じ状態であった.年齢の上昇とともに疾病のある者の増加がみられた(p<0.01).健康への意識は在日期間の短い者(p<0.01)と男性(p<0.05)が強かったが,健康的生活習慣行動の実施数とは関連がみられなかった.健康への意識と健康的生活習慣実施数は40歳代の者が最も低かった.GHQ総合得点は日本人や中国人褥婦と比較してとても高く,現病歴のある者が高く(p<0.01),行政の健診を受診している者(p<0,01)と健康的生活習慣行動の実施数の多い者が低かった(p<0.05).健康的生活習慣行動の実施数は学歴の高い者(p<0.05),朝食の摂取している者と飲酒しない者や運動習慣のある者が多く(p<0.01),熟睡感と関連がみられた(p<0.01).結論:身体的健康度と精神的健康度の関連が改めて示唆された.40歳代を中心とする中年期への健康意識の向上と生活習慣病予防教育の重要性が示唆された.また,知識普及と情報提供のためには近隣日本人との交流を図り,地域住民をも巻き込んだ地域作りが必要である.