抄録
これまで補綴歯科は,器質的咀嚼障害を対象とし,形態の回復イコール機能の回復と言う発想で進んできたかもしれない.しかし,要介護高齢者の増加に伴い,歯や義歯が良い状態でも,咀嚼や嚥下がうまくできない人の治療を行う機会が増えてきている.適切な咀嚼機能評価に基づいた食品選択も,我々の手に委ねられるようになってきている.
農林水産省が「新しい介護食品」を制定したことを踏まえ,本特集が,学会員が世の中の流れを知り,歯科補綴の効果と限界を整理し,食品科学と補綴歯科学の双方が協同し要介護高齢者の食を守るために考える機会になればと思っている.