抄録
本研究は,介護保険制度における居宅介護サービス利用者の主体的な選択にかかわる介護支援専門員の支援の現状と課題を明らかにすることを目的とする.対象は,H市における居宅介護支援事業者に所属する介護支援専門員20名である.介護支援専門員に,介護支援専門員の役割の説明,利用者のサービス選択支援の工夫,介護保険制度では対処できない問題,活動を充実させる方法に関する意見・要望等について半構成的面接調査を実施し,調査項目ごとに意味内容の類似性に従って分類を行った.14名の介護支援専門員が,ケアプラン作成,サービス仲介・調整,一緒にサービスを考える等と利用者に自らの役割を説明し,利用者・家族の意向を捉える,身体状態を捉える,サービスの見学を勧める,パンフレットを利用する等のサービス選択の支援を行っていた.12名の介護支援専門員が,利用者と話し合いながらその場でケアプランを作成していたが,その一方で10名の介護支援専門員がケアプランに同意が得られなかった経験があるとも答えていた.また,8名の介護支援専門員は介護支援専門員同士が交流・情報交換する場や研修の機会を要望していた.介護支援専門員が利用者の主体的な選択を支援するうえで,工夫しながら対応している現状が確認できたが,介護支援専門員自身が研修等の機会を求めている現状が明らかになり,サービス利用の支援を充実させていくうえでも介護支援専門員の情報交換・研修の機会を設ける必要がある.