抄録
目的:山間地域の外出頻度の少ない在宅高齢者の特性を明らかにし,その支援の方向性を検討した.方法:A町2地区の65歳以上の全在宅高齢者721名に本人または家族による自記式アンケート調査を実施した.有効回答数は541人であった.外出群と非外出群に分類し身体的,社会的,心理的調査項目との関連を検討した.χ2検定,t検定を行った.またこの2群を従属変数として,年齢,性,外出時介助の有無を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:非外出群の特徴は,家庭内での身の回りについては介助なしに過ごせるが,徒歩で少し遠くに外出することは介助が必要であった.外出等の移動時に,身体的な負担感を自覚できる者(痛み,負担感,見えにくさ等)であった.生活に対する満足感や幸福感は,外出群と比較すると低いものの比較的充足していた.身近な他者との関わりや楽しみをもち,自分の役割があると感じていた.しかし社会との関わりや日常生活の主体性については低下していた.まとめ:山間部では身辺の自立が不可能になると,町に住む子どもの家で同居するか施設に入るため,在宅高齢者は身辺自立が何とか可能な,しかし外出は介助が必要な虚弱高齢者が多いことが明らかになった.閉じこもりを予防するためには,仲間との交流の機会だけではなく,移動手段の確保が必要である.また通常(健康時)の社会生活ができる環境を整えることも重要であり,今後生活空間(場)を広げる外出機会とその手段を確保・支援するための施策が必要である