抄録
本研究の目的は,県保健師が,管轄する地域の市保健師に働きかけ,子育て支援体制の構築を推進した1事例より,その展開過程における県保健師の活動方法と意図の特徴を質的記述的に明らかにすることである.県保健師は地域の課題解決に取り組むアクションリサーチ参加者であった.結果,県保健師の活動は,地域保健の課題を明示し,解決に向かう活動のきっかけと推進力を生み,その継続基盤を整備しながら施策化・システム化に向かう段階的な目標を立てて行う方法であった.また目標達成に向けては,市保健師との協同を基盤に,モデル事業の活用から実務者レベル,部課長レベル,住民参画の支援体制をつくり発展させるという方法で展開していた.また県保健師は,市保健師が自信をもち主体的に活動を選択するようさまざまな意図で刺激を投げかけ,スキルの強化や活動の動機・意欲の向上を起こしていた.これらは,国が示す地域における保健師の保健活動指針の内容を具現化する多元的で螺旋的な活動展開の文脈を呈していた.