日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
7 巻, 2 号
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  • 松本 泉, 新開 淑子
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 5-12
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域精神保健福祉活動における保健師の訪問回数判断に関与する指標を明らかにし,判断を困難にする影響要因を検討することを目的とした.対象と方法:対象は,北海道内10保健所において統合失調症者の訪問指導に従事している保健師52名であった.調査方法は郵送法による無記名自記式質問紙法とし,調査期間内に訪問指導した慢性統合失調症事例に関する記載を依頼した.調査項目は,(1)対象者の基本的属性,(2)事例の基本的属性,(3)生活能力(Life Assessment Scale for Mentally Ill),(4)精神症状(Brief Psychiatric Rating Scale),(5)ソーシャルサポート状況(Jichi Medical Schoolソーシャルサポートスケール),(6)保健師の判断,で構成した.データ分析は,判別分析,Kruskal-Wallis検定および多重比較を行った.統計解析にはSPSS Ver.10を用いた.結果および考察:対象者52名に調査票を配布し,43名から回答を得た(回収率82.7%).対象者から提出された83事例を分析した.年間訪問回数が適切であると評価された52事例について,判別分析を行った結果,訪問回数を年3回以下とする判断指標は,「家族外情緒的サポート」,「陰性症状」「対人関係」に問題がない場合であり,訪問回数を年10回以上とする判断指標は,「家族情緒的サポート」,「持続性・安定性」,「労働または課題の遂行」に問題がある場合であることが明らかとなった.また訪問回数を不適切と判断する要因には情緒的サポート不足が関与しており,訪問回数判断を困難にする要因には,統合失調症者の生活能力や情緒的サポート状況を適切にとらえられないことが関与していた.統合失調症者は疾病と障害が共存し常に再発・悪化の危険にさらされているため,本人のセルフケア能力や家族のケア力量を適切に評価し援助していくことが必要である.本研究で示された訪問回数判断指標を訪問場面で用いることは判断根拠を明確にし,有用であると考える.
  • 加藤 典子, 麻原 きよみ
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 13-19
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,住民グループのメンバーが活動を地域に発展させていくプロセスを記述することを目的とした.対象は,認知症高齢者(痴呆性高齢者)の介護者の会のメンバー13名であった.データは,対象者への半構成的面接,グループの参加観察,メンバーに関する記録から収集し,grounded theory approachの継続的比較分析を用いて分析した.その結果,以下のことが明らかになった.1.認知症高齢者の介護者の会のメンバーが活動を地域に発展させていくプロセスとは,認知症高齢者の介護について地域に伝えていくプロセスであった.このプロセスは,認知症高齢者の介護について,(1)地域に伝えることができない,(2)地域に伝えなければならない,(3)介護者の会で伝えることができる,(4)-1) 地域に伝えていきたい,(4)-2) 地域に伝えていく,という4段階で構成されていた.2.認知症高齢者の介護について伝えることができない段階のメンバーの苦悩の経験は,後に認知症高齢者の介護について地域に伝えていく原動力となっていた.3.メンバーが介護者の会で介護経験を伝えることを繰り返した経験は,メンバーの認知症高齢者の介護に関する価値観と支援者役割に関する価値観を変換し,支援者となることを可能にしていた.4.メンバーは,介護者の会から,特定の個人,地域全体,未来へと対象と方法を拡大し,認知症高齢者の介護について地域に伝えていった.以上のことから,保健師はグループとメンバーの成熟度を考慮しながら,段階に応じて支援していくことの必要性が示唆された.
  • 島内 節, 森田 久美子, 友安 直子
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 21-26
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在宅ケアを利用している高齢者のアウトカム改善に影響するケアマネジメント要因を探るために,ケアマネジャーの職種別に担当事例のアウトカム改善率とケアマネジメントの業務実施内容と実施率等を比較し,効果的なケアマネジメントのあり方を検討した。方法:各ケアマネジャーは2001年10月〜12月の要支援から要介護5までの6事例をセットとし,2カ月間のケアの前後2回のアセスメント(アウトカム測定指標)と,この間のケアマネジメント業務実施内容の調査を行った。ケアマネジャー64名(看護職29,福祉職24,その他職11),利用者384事例を分析対象とした.結果:利用者のアウトカム36項目中,有意差はないが職種間で相対的にケア後にアウトカム改善率が高かった項目数は,看護職は18項目で,特に「症状と健康状態」の改善項目が多かった.アウトカム改善が多くの項目にみられた看護職はケアマネジメントにおいて説明・同意の実施率が有意に高く,サービスとして訪問介護・訪問看護・通所介護・通所リハビリテーションを幅広く26〜45%の利用者に提供していた.アウトカムが低かった他職種は訪問介護と通所介護に集中して50〜61%の利用者に提供していた.ケアマネジメント業務について利用者による実施の認識率と満足度は18項目すべてに有意相関がみられた.結論:アウトカム改善に有効なケアマネジメントとして医療ニーズの多い事例は看護職が担当するなどケアマネジャーの専門性を生かすこと,サービスの種類を事例のニーズに合わせて組み合わせること,利用者への説明と同意を得ること,満足度を高めるにはケアマネジメント業務内容の実施を利用者が認識できるように説明する必要がある.
  • 赤松 佳代, 岡本 玲子, 中山 貴美子, 塩見 美抄
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 27-32
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,県保健師が,管轄する地域の市保健師に働きかけ,子育て支援体制の構築を推進した1事例より,その展開過程における県保健師の活動方法と意図の特徴を質的記述的に明らかにすることである.県保健師は地域の課題解決に取り組むアクションリサーチ参加者であった.結果,県保健師の活動は,地域保健の課題を明示し,解決に向かう活動のきっかけと推進力を生み,その継続基盤を整備しながら施策化・システム化に向かう段階的な目標を立てて行う方法であった.また目標達成に向けては,市保健師との協同を基盤に,モデル事業の活用から実務者レベル,部課長レベル,住民参画の支援体制をつくり発展させるという方法で展開していた.また県保健師は,市保健師が自信をもち主体的に活動を選択するようさまざまな意図で刺激を投げかけ,スキルの強化や活動の動機・意欲の向上を起こしていた.これらは,国が示す地域における保健師の保健活動指針の内容を具現化する多元的で螺旋的な活動展開の文脈を呈していた.
  • 中山 貴美子, 岡本 玲子, 赤松 佳代, 鳩野 洋子, 塩見 美抄, 岩本 里織
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 33-39
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,研究者が現場の課題を解決しようとしていた保健師と協同して活動を展開した1事例より,その過程をアクションリサーチの視点から分析し,研究者の働きかけおよび,それによる保健活動と保健師の変化を明確化することである.対象は,保健所に勤務する保健師である.本研究結果として,保健活動の変化では,「難病保健活動における保健師の専門性の不明確」から「保健師の専門性の明確化」「保健師の専門性を活かした活動の展開」「他地域への成果の波及」「他分野での継続的変化の促進」までの5局面が明らかになった.保健師の変化では,「混沌」から「自己の専門性の気づきと内省」「意識と行動の変化」「継続的自己研鑽」「継続的変化促進者」までの5局面が明らかになった.また,結果を生んだ研究者の働きかけの8つのねらいと,15の特徴が明らかになった.研究者のねらいは,「保健師が根拠をもって,自己の専門性を明確化できる」「保健師集団として活動が改善・定着する」「実践における研究の実施と成果生成」等であった.働きかけは,「対話や既存ツール活用によって,保健師自身が自己の専門性や活動の課題に気づく過程を促進する」「保健師集団が経験を共有する過程を重視し,保健師集団として活動が定着するように支援する」「(研究者の)協同研究参加を活用し,保健師が研究のプロセスをふんで活動できるように支援する」等であった.本研究過程を通して,保健所保健師の専門性を活かした活動への変化や,保健師の意識や活動が変化し,継続的に実践を変化させる展開がみられた.今後,現場の課題解決のための効果的な支援について検討していきたい.
  • 齋藤 美華, 小林 淳子, 服部 ユカリ
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    高齢者間の社会交流の1つとして,東北地方の農・漁村地域を中心に「お茶飲み」と称した習慣がある.市町村では,その「お茶飲み」の機能を生かして住民主体の高齢者健康づくり事業を行っている.しかし,「お茶飲み」に関する研究はほとんどなく,その影響も明確ではない.そこで本研究では,前期高齢者を対象に,「お茶飲み」がソーシャル・サポートと主観的幸福感および交流の充実感に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした.研究方法は,M県T町在住の前期高齢者の中から無作為抽出した1,000人を対象に,郵送による質問紙調査を行った.分析対象は有効回答の得られた703人とした.その結果,(1)対象者703人のうち,「お茶飲み」に参加している者は67.9%であり,また,「お茶飲み」の参加頻度は,月に3〜4回と回答した者が23.1%と最も多かった.(2)多変量解析の結果,「お茶飲み」は友人・隣人・知人からの情緒的サポートと手段的サポートにおいて影響を及ぼす要因となった.また,交流の充実感においても「お茶飲み」は影響を及ぼす要因となった.しかし,主観的幸福感においては,「お茶飲み」は有意な関連要因とはならなかった.(3)「お茶飲み」は社会的交流としての機能があることが確認できた.
  • 水島 ゆかり, 前田 修子, 斎藤 好子
    原稿種別: 本文
    2005 年 7 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2005/03/18
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,日本とイギリスにおける在宅痴呆性高齢者の行動障害に対する介護者の認識の違いを探ることである.方法:日英両国の対象について,独自に作成した調査用紙を用いて質問紙調査を行った(日本:2000年,イギリス:2001年).分析対象は,日本ではM県T保健所管内でデイサービスを利用している痴呆性高齢者を在宅で介護している主介護者141名,イギリスではS州内の同様の介護者69名であった.結果:介護者が認識していた痴呆性高齢者の行動障害のうち,日本とイギリスの間で有意差のみられたものは3つであった.「理由なくあるいは些細なことで興奮する」「電話の応対や訪問者の応対などができない」は日本で,「夜中に騒いだり出て行ったりする」はイギリスで有意にodds比が高かった.また,介護者が対処に困ると認識していた痴呆性高齢者の行動障害のうち,日本とイギリスの間で有意差のみられたものは,「失禁する」「夜中に騒いだり出て行ったりする」であり,いずれもイギリスにおいて困っている割合が高かった.結語:痴呆性高齢者の行動障害の有無と対処に困る行動障害に対する介護者の認識には違いがみられ,日本ではイギリスに比べて痴呆性高齢者に行動障害があっても,困ると認識しない傾向がある可能性が考えられた.
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