抄録
目的:本研究の目的は,日本とイギリスにおける在宅痴呆性高齢者の行動障害に対する介護者の認識の違いを探ることである.方法:日英両国の対象について,独自に作成した調査用紙を用いて質問紙調査を行った(日本:2000年,イギリス:2001年).分析対象は,日本ではM県T保健所管内でデイサービスを利用している痴呆性高齢者を在宅で介護している主介護者141名,イギリスではS州内の同様の介護者69名であった.結果:介護者が認識していた痴呆性高齢者の行動障害のうち,日本とイギリスの間で有意差のみられたものは3つであった.「理由なくあるいは些細なことで興奮する」「電話の応対や訪問者の応対などができない」は日本で,「夜中に騒いだり出て行ったりする」はイギリスで有意にodds比が高かった.また,介護者が対処に困ると認識していた痴呆性高齢者の行動障害のうち,日本とイギリスの間で有意差のみられたものは,「失禁する」「夜中に騒いだり出て行ったりする」であり,いずれもイギリスにおいて困っている割合が高かった.結語:痴呆性高齢者の行動障害の有無と対処に困る行動障害に対する介護者の認識には違いがみられ,日本ではイギリスに比べて痴呆性高齢者に行動障害があっても,困ると認識しない傾向がある可能性が考えられた.