抄録
目的:保健分野の住民組織の1つとして,行政養成型ボランティアである健康推進員が存在する.本研究は,健康推進員のもつ地域社会への態度に着目し,経験年数による比較とともにその関連要因を探索し,今後の健康推進員活動における組織づくりと行政による活動支援の手がかりを得ることを目的とした.方法:S県A市およびB市で活動する健康推進員604名を対象に,2005年9月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.結果:有効回答数は432票(有効回答率71.5%)であった.地域社会への態度尺度の因子分析を行った結果,「積極性」,「協同志向」の2因子に分かれた.これらはいずれも,経験年数9年以上群が1〜3年群に比べて有意に高かった.また,「積極性」は,1〜3年群,4〜8年群で養成講座修了時のやる気が高く,9年以上群で地区の区長(自治会長)が健康推進員活動に協力的であるほど高かった.「協同志向」は,1〜3年群,4〜8年群で養成講座修了時のやる気が高く,健康推進員仲間からのサポートが高いほど,すべての年数群で地域住民からのサポートが高いほど高かった.結論:健康推進員活動における組織づくりに関して,健康推進員同士のつながりを強化すること,地域住民との関わりがもてるような活動に参加してもらうことの重要性が示唆された.また,活動支援として,地区の区長(自治会長)の健康推進員活動への協力が得られるよう働きかけること,仲間,地域住民からのサポートを強化するような支援を行うことが重要であると考えられた.