抄録
アドラー心理学に基づくクラス会議は,学級全体の運営に関わる問題の解決を目的とする「クラス議会(集団議題)」と問題を抱えた個人の支援を目的とする「オープンカウンセリング(個人議題)」の2つの話し合いに基づく機能を持つ。本研究は,この2つの機能に基づく話し合いの比較を通して,クラス会議における議題内容が児童の発話に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,クラス会議中の全体討議場面とペア対話場面における児童の発話を量的・質的に分析し,比較検討を行った。その結果,次のことが明らかとなった。一つ目は,全体討議場面において,集団議題は個人議題に比べて「話し合い」を運営・維持する発話を多くすることに影響を及ぼし,個人議題は集団議題に比べて,雑談・独り事などクラス会議とは関係のない発話を多くすることに影響を及ぼすことが示された。二つ目は,ペア対話場面において,児童の発話カテゴリーを数量的に分析した結果では有意な差は見られなかったが,比較的大きな会話単位で分析した結果,集団議題は個人議題に比べて,意見の対立を避け,どちらかが同調する会話ケースを多くすることに影響を及ぼし,個人議題は集団議題に比べて,お互いに納得するまで対話しようとする会話ケースを多くすることに影響を及ぼすことが示された。このように,集団議題と個人議題では,児童の発話に異なる影響を及ぼしている可能性が示された。