抄録
本研究は,児童の心理的特性の1つである共感性に着目し,共感性の高い児童と共感性の低い児童の発話にどのような特徴が見られるのかを明らかにすることを目的として,アドラー心理学に基づくクラス会議の全体討議場面における児童の発話を交流的発話と不規則発話という2つの視点から量的・質的に分析し,比較検討を行った。その結果,交流的発話及び不規則発話のどちらにおいても,共感性の低い群の児童の発話が共感性の高い群の児童よりも有意に多いことが明らかとなった。その理由として,(1)クラス会議における課題構造が共感性の低い児童にとっても理解しやすく,話し合い活動に参加しやすいこと,(2)共感性の低い児童は,授業の課題とは関連のない発話や授業進行の形式から逸脱した不規則発話の中でも,相手の意見を先に述べてしまう「先取」や相手の間違いを注意する「修正」に該当する発話を有意に多くしていたこと,(3)共感性の低い児童の不規則発話が多いため,相対的に共感性の高い児童の発話機会や発話量の減少に繋がった可能性があること,の3点が示された。