抄録
本研究では,特別支援学級に在籍する児童を対象に,学級担任の指導によるアサーション・トレーニング(以下,ATと略記する)が児童のアサーティブな自己表現能力に及ぼす効果について検討した。本実践に関する効果については,アサーション尺度と各授業後の自由記述内容から分析した。その結果,「自己主張総得点」において,事後の尺度の得点が有意に増加する傾向が見られた。同様に,「他者尊重総得点」において,事後の尺度の得点が有意に高くなった。自己主張と他者尊重の両面においてATの効果が認められたことから,対象児にアサーティブな自己表現のスキルが備わったことが示唆された。一方,対象児の自由記述において,ATプログラムの回を重ねることで,適切に自己主張するスキルを実行しようとする態度や他者尊重する姿勢が見られるようになった。このことから,特別な支援を要する児童に対してATを用いることは,有効な支援方法の一つとなることが確認された。