近年,文科省によって学級経営の重要性が示されながらも,学級経営の定義は示されず,また体系化された研究領域が存在していないなど,学級経営の不明瞭さが課題として指摘されている。そのため,学術的根拠に基づく共通事項が共有されないために,学級経営が個々の教師の文化論に閉じてしまうことが指摘されており,学級経営に関する科学的根拠を示した実践研究の蓄積が望まれている。しかし,実践者と研究者とがそれぞれに学級経営に対する認識の枠組みをもち,それが互いに理解されていないために実践と研究の乖離が起こることが課題として考えられる。そこで,本研究では,調査(1)において,実践研究の位置づけ,論文の構成,学級経営研究の方向性と科学的根拠の基準の3つの視点から学級経営研究における実践研究に必要な要件を整理し,調査(2)において,実践研究の要件を視点に第3回日本学級経営学会研究発表大会の発表資料を整理・分類した。結果から,研究の目的を明示することと,科学的根拠の基準を満たすために量的調査では統計的手法を用いて「エビデンス・レベル」の4以上を満たすこと,質的調査では「質の高い質的論文の条件」を満たすことの重要性が見出された。
今後の学級経営における実践研究の課題として,実践研究の要件を満たした上で研究の妥当性を高めること,学級経営研究における剰余変数の影響にどう向き合うのか検討することの2点が挙げられた。
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