日本学級経営学会誌
Online ISSN : 2434-7760
5 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 第3回日本学級経営学会研究発表大会での発表資料の分析
    上條 正太郎, 新沼 南, 赤坂 真二
    2023 年 5 巻 p. 1-11
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
    近年,文科省によって学級経営の重要性が示されながらも,学級経営の定義は示されず,また体系化された研究領域が存在していないなど,学級経営の不明瞭さが課題として指摘されている。そのため,学術的根拠に基づく共通事項が共有されないために,学級経営が個々の教師の文化論に閉じてしまうことが指摘されており,学級経営に関する科学的根拠を示した実践研究の蓄積が望まれている。しかし,実践者と研究者とがそれぞれに学級経営に対する認識の枠組みをもち,それが互いに理解されていないために実践と研究の乖離が起こることが課題として考えられる。そこで,本研究では,調査(1)において,実践研究の位置づけ,論文の構成,学級経営研究の方向性と科学的根拠の基準の3つの視点から学級経営研究における実践研究に必要な要件を整理し,調査(2)において,実践研究の要件を視点に第3回日本学級経営学会研究発表大会の発表資料を整理・分類した。結果から,研究の目的を明示することと,科学的根拠の基準を満たすために量的調査では統計的手法を用いて「エビデンス・レベル」の4以上を満たすこと,質的調査では「質の高い質的論文の条件」を満たすことの重要性が見出された。 今後の学級経営における実践研究の課題として,実践研究の要件を満たした上で研究の妥当性を高めること,学級経営研究における剰余変数の影響にどう向き合うのか検討することの2点が挙げられた。
  • 小杉 奏, 佐藤 和紀, 三井 一希, 水谷 年孝, 望月 覚子, 堀田 龍也
    2023 年 5 巻 p. 13-20
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校教師が生じさせている可能性のあるヒドゥン・カリキュラムと担当学年の経験回数の関連を検討することを目的に,現在担任である小学校教師を対象に質問紙調査を実施した。質問項目ごと一要因参加者間分析を行った。その結果,さらなる調査が必要ではあるが⑴高学年を担任した場合は児童の発達段階を考慮し,中学年,低学年を担任した場合以上に発言に関するヒドゥン・カリキュラムを生じさせないための行動を考慮して実践することが必要であると考えられること,⑵1年生の教師は集団や社会のルールに関するヒドゥン・カリキュラムが生じないための行動を考慮して実践し,児童に集団や社会のルール身につけさせる必要があると考えられることが示唆された。
  • 小西 一博
    2023 年 5 巻 p. 21-27
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
    本研究では,特別支援学級に在籍する児童を対象に,学級担任の指導によるアサーション・トレーニング(以下,ATと略記する)が児童のアサーティブな自己表現能力に及ぼす効果について検討した。本実践に関する効果については,アサーション尺度と各授業後の自由記述内容から分析した。その結果,「自己主張総得点」において,事後の尺度の得点が有意に増加する傾向が見られた。同様に,「他者尊重総得点」において,事後の尺度の得点が有意に高くなった。自己主張と他者尊重の両面においてATの効果が認められたことから,対象児にアサーティブな自己表現のスキルが備わったことが示唆された。一方,対象児の自由記述において,ATプログラムの回を重ねることで,適切に自己主張するスキルを実行しようとする態度や他者尊重する姿勢が見られるようになった。このことから,特別な支援を要する児童に対してATを用いることは,有効な支援方法の一つとなることが確認された。
  • 佐藤 和紀, 板垣 翔大, 赤坂 真二, 堀田 龍也
    2023 年 5 巻 p. 29-37
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
     学級経営の基礎的研究として,人工知能を用いた「下駄箱の靴の揃い方判断支援システム」を試作した。また,小学校教諭8名の協力を得て,本システムを1週間,小学校で試行的に実践した。活用中は毎日,下駄箱の写真を撮影し,判定結果を記録した。その結果,「揃っている」ことの判定結果の確信度は徐々に向上し,「揃っていない」ことの確信度は徐々に低下していった。実践の終盤には,撮影方法の違いによって確信度の割合がどのように変わるかを試みる児童の姿が見られた。このことから,児童は人工知能が示す確信度を意識し,下駄箱を整理したと考えられる。
  • 寺岡 幸作, 永井 寿樹, 鳥居 明日香, 大塚 祐一郎, 須山 諒, 内木 拓海, 赤坂 真二
    2023 年 5 巻 p. 39-49
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,「ステーション授業構想」をもとにした協同学習における対人技能の活用が,児童の協働的な学習過程にどのような影響を与えるか明らかにすることを目的とした。「ステーション授業構想」において,担任が大事にしたい価値やスキルや態度を明確化・重点化し,その良さや効果を短学活(朝活動等)におけるソーシャルスキルトレーニングや学習場面,生活場面で,担任が一貫・継続指導することにより,対人技能の良さや効果を児童が感じ,あいづちで話し手の受容感を高め,話しやすい雰囲気をつくることや,問い返しによって詳しい説明を促す姿が見られるなど,協働的な学習過程への効果が確認された。
  • 「学級目標」形骸化を防ぐ,「学級じまい」の再考を促す基礎的研究
    藤原 寿幸
    2023 年 5 巻 p. 51-62
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,小学校教師の学級目標に対する意識や,実際に学級目標をどのように設定・運用しているかについての質問紙調査を行い,その意識や指導の課題に関する基礎的知見を抽出することであった。これまで,ほとんど研究知見のなかった小学校教師の学級目標に関する意識や指導行動について,調査を通してその基礎的知見を明らかにすることができた。調査対象となった小学校教師のほぼ全員が学級目標を設定しているが,設定後の扱いにはばらつきがあること,達成度の確認については約2割の教師が実施していないこと,確認している教師の中でも確認の方法にばらつきがあることなどを明らかにした。これらは学級目標設定後の運用や達成の確認について課題があるということだけではなく,小学校教師の学級開きと「学級じまい」との間で意識の差が大きいという課題も抽出することができた。今後の課題としては,調査人数を増やすことや調査地域を広げること,また,学級目標を基盤として,1年を通して学級の児童全員がチームとして成長し,学級目標を自己調整的に活用・運用しながら達成に向けて取り組んでいくような学級経営の方法の開発が必要になることなどが挙げられた。
  • 日本学級経営学会
    2023 年 5 巻 p. 63-66
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル フリー
    2023年3月4日(土)9:50〜16:30にZoom(上越教育大学会場)で開催された「第5回日本学級経営学会研究大会の記録」である。 研究大会のプログラムを載せている。 具体的には,基調講演,鼎談,そして研究発表の題目と発表者一覧である。
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