抄録
本研究の目的は,小学校教師の学級目標に対する意識や,実際に学級目標をどのように設定・運用しているかについての質問紙調査を行い,その意識や指導の課題に関する基礎的知見を抽出することであった。これまで,ほとんど研究知見のなかった小学校教師の学級目標に関する意識や指導行動について,調査を通してその基礎的知見を明らかにすることができた。調査対象となった小学校教師のほぼ全員が学級目標を設定しているが,設定後の扱いにはばらつきがあること,達成度の確認については約2割の教師が実施していないこと,確認している教師の中でも確認の方法にばらつきがあることなどを明らかにした。これらは学級目標設定後の運用や達成の確認について課題があるということだけではなく,小学校教師の学級開きと「学級じまい」との間で意識の差が大きいという課題も抽出することができた。今後の課題としては,調査人数を増やすことや調査地域を広げること,また,学級目標を基盤として,1年を通して学級の児童全員がチームとして成長し,学級目標を自己調整的に活用・運用しながら達成に向けて取り組んでいくような学級経営の方法の開発が必要になることなどが挙げられた。