抄録
本研究では,コンセンサス型意思決定を取れ入れたクラス会議において,主体化が生じる過程に関わる個人に着目した調査を行った。既存の秩序に異議を唱える個人と,その声に応答する個人,ファシリテーターとして関与する筆者のあいだで起こっていることを多面的に捉えて検討するため,複数の出来事を重ね合わせて一つの事例をより広範かつ多面的に捉える横断的なエピソード記述を援用した。その結果,コンセンサス型意思決定は主体化が生じるきっかけを生み出す役割を果たし,クラス会議がそのきっかけを活かした最適解を生み出す過程を支える役割を果たすことでトランスクルージョンが起こる可能性が示唆された。