日本学級経営学会誌
Online ISSN : 2434-7760
7 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 阿部 緑, 赤坂 真二
    2025 年7 巻 p. 1-11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,第一に教師用RCRTを用いて小学校の若手教員1名の認知枠組みを調査し,教師用RCRTの実施が一定 期間後に若手教員自身の認知次元やコンストラクトに変容を及ぼすかどうかを検討することと,「教師内地位数」を用いて若 手教員の個々の児童認知の変容と児童のスクール・モラールとの関連について検討することを目的とした。第二に,継続し た面談と観察を行い,認知変容の過程と認知変容に影響を与えたと考えられる事例を明らかにすることを目的とした。その 結果,教師用RCRTの因子分析の結果からコンストラクト(概念)に変容が見られ,担任教師の個々の児童認知と児童の スクール・モラールは相関関係にあることが示唆された。また,認知変容に影響を与えると考えられる事例に,教師用RC RTの実施と継続した面談の実施が挙げられ,周囲の人が継続した面談を通して児童のよさや肯定的な情報を伝えること, 困り感に寄り添った支援やアドバイスを行うことで,認知次元や見方の変容が促される可能性があることが示唆された。
  • 教育の「主体化」に与える影響の探索的検討
    仙波 瑞己, 赤坂 真二
    2025 年7 巻 p. 13-25
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,コンセンサス型意思決定を取れ入れたクラス会議において,主体化が生じる過程に関わる個人に着目した調査を行った。既存の秩序に異議を唱える個人と,その声に応答する個人,ファシリテーターとして関与する筆者のあいだで起こっていることを多面的に捉えて検討するため,複数の出来事を重ね合わせて一つの事例をより広範かつ多面的に捉える横断的なエピソード記述を援用した。その結果,コンセンサス型意思決定は主体化が生じるきっかけを生み出す役割を果たし,クラス会議がそのきっかけを活かした最適解を生み出す過程を支える役割を果たすことでトランスクルージョンが起こる可能性が示唆された。
  • 水流 卓哉, 松山 康成, 赤坂 真二
    2025 年7 巻 p. 27-35
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,学級集団の自治的能力を測定する尺度を開発し,その信頼性と妥当性について検討した。小学校4,5,6年生662 名を対象に質問紙調査を行い,探索的因子分析と確認的因子分析の手順を踏まえて自治的集団尺度を作成した。得られた因子は「協働的問題解決」「秩序」「支持的風土」の3因子 15 項目であった。信頼性については,Cronbach の α 係数を算出した結果,十分な信頼性を有することが示された。また,妥当性については,学級満足度尺度との相関分析を行った結果,中程度の正の関連が認められ,基準関連妥当性が確認された。さらに,下位尺度の協働的問題解決,秩序,支持的風土において,男子の得点に比べて女子の得点が有意に高いことが確認され,学年差については,小学6年生の得点に比べて小学4・5年生の得点が有意に高く,交互作用についても有意であったことから,女子の方が男子よりも学年の上昇に伴う得点の上昇が顕著であることが示された。
  • 小学3年生「振り返りジャーナル」185 日間の実践を通して
    前田 考司, 阿部 隆幸
    2025 年7 巻 p. 37-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校 3 年生における,継続した児童の振り返り「振り返りジャーナル」の 185 日間の記述を量的・質的に分析し,学校環境適応感との関連を調査した。記述量の分析については,185 日間の文字数の平均を分析した結果,70 日程度の連続した取組を通して記述量が増加してくことが示唆された。併せて,振り返りの記述内容について,1文を単位として「行動」「思考」「感情」「望み」の4つの階層に分類し,その出現数の変容を検証した結果,文字数の増加に伴い,文の数も増加することが示唆された。また,継続した取組により顕在的な「行動」に関する記述が,それに基づいた「思考」を交えた記述へと変容する可能性が示唆された。「感情」に関する記述については,継続した取組の中での新しい体験や発見を伴う活動の振り返りにおいて表出する機会が増える可能性が示唆された。「望み」に関する記述については,前述の「行動」や「思考」に関して継続して振り返る中で,強みや課題を見つけ,具体的な目標や展望につながりやすい傾向があることが推察された。また,記述量と学校環境適応感との関連を検証した結果,100 日を越えた毎日の継続により,学校環境適応感尺度「アセス」の項目のうち,「生活満足感」,「非侵害的関係」,「対人的適応」については記述量と正の相関が生じることが示唆された。
  • 算数科と学級活動の学習を通して
    渡邉 信隆, 赤坂 真二
    2025 年7 巻 p. 49-58
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校の協同学習において,学習課題がグループ成員のグループ学習に対する認知と成員間の相互作用に与える影響を算数科と学級活動の学習を通して検討することを目的とした。調査の結果,児童のグループ学習に対する肯定的認知は,1つの正解が存在する課題である算数科の学習においてよりも,1つの正解や問題を解決するための一定の手順が存在しない課題である学級活動の学習において高かった。また,グループ成員の発話内容の分類から,算数科では,「確認」に対する「応答」といった二者間の発話が多かったのに対して,学級活動では,「意見」や「確認」といったグループ成員全員を含めた発話が多かった。これらのことから,児童によっては単純に発話量やグループ成員に対する貢献度のみによってグループ学習に対して肯定的に認知しているかどうかは判断できないことが示唆された。また,児童の協同学習に対する肯定的認知には児童相互のよりよい相互作用が重要であり,それには,学習課題の影響が大きいことが明らかとなった。
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