抄録
本研究は,小学校 3 年生における,継続した児童の振り返り「振り返りジャーナル」の 185 日間の記述を量的・質的に分析し,学校環境適応感との関連を調査した。記述量の分析については,185 日間の文字数の平均を分析した結果,70 日程度の連続した取組を通して記述量が増加してくことが示唆された。併せて,振り返りの記述内容について,1文を単位として「行動」「思考」「感情」「望み」の4つの階層に分類し,その出現数の変容を検証した結果,文字数の増加に伴い,文の数も増加することが示唆された。また,継続した取組により顕在的な「行動」に関する記述が,それに基づいた「思考」を交えた記述へと変容する可能性が示唆された。「感情」に関する記述については,継続した取組の中での新しい体験や発見を伴う活動の振り返りにおいて表出する機会が増える可能性が示唆された。「望み」に関する記述については,前述の「行動」や「思考」に関して継続して振り返る中で,強みや課題を見つけ,具体的な目標や展望につながりやすい傾向があることが推察された。また,記述量と学校環境適応感との関連を検証した結果,100 日を越えた毎日の継続により,学校環境適応感尺度「アセス」の項目のうち,「生活満足感」,「非侵害的関係」,「対人的適応」については記述量と正の相関が生じることが示唆された。