抄録
本研究の目的は,よりよい人間関係の形成及び学級経営の充実を図るために,クラス会議において教師が勇気づけの考えに基づいたフィードバックを行うことで,児童の共同体感覚の下位項目である自己受容に及ぼす影響を小学生版共同体感覚尺度,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて検証することである。
量的な分析の結果では,児童の共同体感覚及び,自己受容に正の変容が確認されたこと。質的な分析の結果では,32 個の概念と9個のカテゴリーが生成され,児童は【貢献する気持ちの高まり】によって生起した意欲や行動を【他者からのフィードバックによる自信と喜びの実感】をしていることから,児童の共同体感覚の自己受容に影響を及ぼす過程が見出された。また,所属感や信頼感の高まりによる【人間関係の深化】を経て,【他者からのフィードバックによる自信と喜びの実感】をして,自己を肯定するプロセスが捉えられたことから,教師が勇気づけの考えに基づくフィードバックを行うこと,信頼できる学級の仲間からの言葉かけがあったことによって,児童の自己受容に影響を及ぼした可能性が示された。