抄録
本研究は,中学校における探究学習の指導の成果と課題を明らかにすることを目的とする。1年次から3年次にかけての生徒の資質・能力の変化に関して質問紙調査を用いて分析し,学習形態や指導方法が生徒の自己評価や学習成果に与える影響を検討した。その結果,1・2年次では生徒が探究に必要な資質・能力を個別に捉えていたが,3年次になるとそれらを関連付けて理解する傾向が見られた。また,3年次の生徒は学習態度や情報処理能力,自己評価能力の面で高い値を示し,指導の積み重ねが探究学習に有効であることが示唆された。一方で,自己評価は2年次以降低下する傾向があり,学習のマンネリ化や個別探究への移行による戸惑いが影響していると考えられる。今後の課題として,探究学習の学習形態の工夫や,協働学習に対する生徒の意識改善のための全校的な取り組みが求められる。