抄録
本研究の目的は,学校組織の経営・運営に関わる中学校学級担任教師の行動認知と,職場風土による影響について明らかにするとともに,分析結果を活用する可能性について検討するものである。研究1では,PM式リーダーシップ理論を踏まえ,学校組織への行動についての質問項目を作成し,因子分析を行った。その結果,5つの因子が抽出され,「主体的にリードする行動」「向上心を持ち学校を牽引しようとする行動」がP機能に該当し,「職員と協力する行動」「情報を送受信する行動」「組織で連携する行動」がM機能に該当すると分析された。また,男性は,P機能,M機能の行動認知が経験年数20年目まで上昇する傾向があり,女性は,M機能の行動認知が経験年数の浅い段階から比較的高く,経験年数が上がっても変化が小さい傾向が見られた。研究2では,「協働」(協働的職場風土)との分散分析を行った。その結果,「協働」が高い職場では,経験年数が浅い学級担任教師の行動認知は比較的高く,経験年数の違いによる差が小さい傾向が見られた。一方,「協働」が低い職場では,経験年数が浅い学級担任教師の行動認知は低く,中堅学級担任教師の行動認知は高い傾向が見られることが確認された。本研究で明らかになった学校組織への行動認知の分析結果は,中学校学級担任教師の行動改善や,管理職等による学校組織運営への活用が期待できる。