抄録
本研究では,小学校通常学級における特別支援対象児の在籍数によって,同じ学級に在籍する他の児童(周囲児)の学級適応感に差異があるのかを明らかにすることを目的とした。公立小学校に通う4~6年生,3,779人を対象に調査をしたところ,特別支援教育の対象児童172人と周囲児3,515人の有効回答が得られた。周囲児を,所属する学級の特別支援対象児在籍数によって,対象児が在籍しない群,1名在籍する群,2名在籍する群,3名以上在籍する群に分類し,各群の学級適応感について学級満足度尺度および学校生活意欲尺度を用いて比較検討した。分析の結果,学級満足度尺度の承認得点および学校生活意欲尺度の友達関係得点,学級の雰囲気得点において,在籍数が増えるにつれて低くなる傾向が認められた。この結果から,学級に特別支援対象児が在籍することによって,担任教師は特別支援対象児に個別に関わることが多くなると予想され,学級内の周囲児への指導や声かけが手薄になって,周囲児の学級適応感が低くなるという可能性が考えられた。