2009 年 13 巻 1 号 p. 99-107
近年情報セキュリティの重要性が認識され,情報セキュリティを組織的にかつ継続的に維持するための情報セキュリティマネジメントシステム(information security management system, ISMS)の構築・運用が重要視されるようなった.ISMSを構築する上で,リスクアセスメントと共に重要な役割を果たすのが事業継続計画(business continuity plan, BCP)の構築である.これまでは地震などの大規模災害対策に注目が集まりがちであったが,以前より懸念されていた新型インフルエンザによるパンデミックが2009年に実際に発生したことから,大学における健康危機対策のためのBCP作成が急務となっている.BCP中の手順には,Webページを用いた学生等への連絡や電子メイルを利用したスタッフ間の連絡・協議等が含まれるため,情報基盤の継続性が大前提となっている.このことは,大学全体の情報基盤を担っている情報系センターにおいてもBCPの策定が必要とされていることを意味している.そこで本論文では,BCPの構成要素や論点を整理した上で,山口大学メディア基盤センターにおける健康危機BCPを構築した事例を報告する.