2010 年 14 巻 1 号 p. 117-128
情報技術が世界的に普及整備され,経済社会の基盤となった現在,我々は保有する情報資源を有効かつ便利に活用できるようになっている.一方でこれらの進んだ環境が悪用される例も後を絶たない. これまではネットワークや情報システムの事故に対して「未然に防ぐにはどうすればよいのか」が注目されてきたが,現在では情報の取り扱いにおける対策が「事故前提社会システム」としての情報インフラ構築,運用および対策に切り替わってきている.しかし,事後の状況を個々の環境であらかじめ作り出すことは困難であり,人的,物的にもコストがかかる. 情報危機管理演習を遠隔から誰でも参加できる形式で実現することで,より低コストで情報セキュリティ対策に必要な人材の育成を行うことが可能となり,情報セキュリティについての啓蒙を深めることにもつなげることができる. 本稿では情報危機管理演習の構築手法に加え,これに遠隔から誰でも参加できる形式を実現する手法を提案する.また,他の類似する情報セキュリティ演習と比較,運用上の課題を検討し,将来の運用支援と拡張性について考察する.