抄録
本研究の目的は,大学キャリアセンターの相談場面における学生を傷つける発言の有無とその内容を明らかにすることであった(研究1)。また,そのような発言が相談担当者と学生の支援関係に与える影響と,それが生起しやすい条件を,相談担当者の性別,および学生と相談担当者の性の一致・不一致に着目し明らかにすることであった(研究2)。研究1では,4,284名を対象にアンケート調査を実施し,傷つける発言を受けた経験のある592名を分析対象とした。研究2では,6,477名を対象にアンケート調査を実施し,895名のデータを分析対象とした。研究1の分析の結果,59%の学生が傷つける発言を受けた経験を有していた。また,その内容は「間接的マイクロアグレッション」「直接的マイクロアグレッション」「カウンセリング態度の欠如による発言」の3カテゴリーに分類された。研究2の分析の結果,学生(男性)では同性の相談担当者との間で間接的マイクロアグレッションが生じやすく,学生(女性)では同性の相談担当者との間で直接的マイクロアグレッションが生じやすいことが明らかになった。