抄録
本論では,心理支援における省察の展開をアドボカシー実践の観点から明らかにするとともに,批判的省察の教育について議論を整理し,今後望まれる教育・訓練を検討した。専門家養成における省察的実践は心理支援にも取り入れられ,基盤コンピテンシーの1 つとして位置づけられているが,アドボカシー実践においては権利擁護のために個人や既存の制度に対して働きかける際に,支援者自身もその環境に身を置いていることを自覚しながら,物事の前提や根本から問い直す批判的省察が必要となる。批判的省察の教育・訓練においては,支援者自身が社会的文脈に埋め込まれた存在であり,自らの特権性・周縁性を認識することが必要であるが,それを認識し是正し行動に移すことには困難が伴う。意識下の価値観や偏見に気づき,不快感を受け止め吟味し,社会的文脈の中の自己を認識するなど丁寧な学習が必要である。クライエントの人権を重視した心理支援のニーズが高まる中,批判的省察の教育・訓練の整備が望まれる。