日本臨床細胞学会雑誌
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原著
口腔扁平上皮癌の液状化検体細胞診に関する検討
—発現部位, 臨床発育様式別の評価—
吉田 佳史田中 陽一佐藤 一道山内 智博片倉 朗山根 源之
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2013 年 52 巻 5 号 p. 399-405

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抄録

目的 : 侵襲の少ない擦過細胞診は直視直達が可能という環境を背景に, 口腔扁平上皮癌に対する有用な診断手段と考える. しかし, 口腔細胞診では, いまだに以前の婦人科の診断基準である Papanicolaou class 分類を用いており, 口腔特有の病態から診断に配慮が必要なことがある. 今回, 口腔擦過細胞診の診断において, 組織診等との関連性を検討した.
方法 : 2007 年 7 月∼2010 年 6 月の 3 年間に東京歯科大学口腔がんセンターで加療を行った症例で初診時に液状化検体細胞診を行い, その後の病理組織学的に口腔扁平上皮癌と診断した 91 例において発現部位, 臨床発育様式, 細胞診所見について検討を行った.
成績 : 91 例における細胞診の確診率は 67.0%, classIII (疑陽性) 以上の正診率では 87.9%であった. 発現部位別で classIV (陽性) 以上の割合は歯肉 56.8%, 頬粘膜 57.1%, 舌 73.0%, 口底 87.5%, 口蓋と口唇 100%であった. 臨床発育様式別の classIV (陽性) 以上の割合は, 内向型 82.4%, 外向型 20.0%, 表在型 23.1%であった.
結論 : 今回の検討から, 扁平上皮癌を疑い, 細胞診で classIII (疑陽性) 以下の診断となった症例であっても 33%程度で扁平上皮癌を認めたことから, その扱いには十分な配慮の必要性が再認識された.

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