抄録
症例は59歳女性で胸腺腫摘出術後に50Gyの放射線照射を受けた既往がある. 12年を経過し, 今回右胸鎖関節部に腫瘤を自覚して受診した. 精査の結果spindle cell sarcomaと診断され, 腫瘍を含めて広範囲に右胸壁を切除し, ポリプロピレンメッシュ, チタンメッシュ, 大胸筋弁を用いて再建した. 病理組織学的診断は線維肉腫で切除断端に腫瘍は認めなかった. 第34病日に退院となった. 8ヵ月後, 左背部皮下に再発し切除した. その後ifosfamideによる化学療法を2クール施行し現在のところ明らかな再発は認めていない. Radiation induced sarcomaは放射線照射部位に0.03~0.8%の頻度で生じる比較的稀な疾患である. 化学療法のみの治療成績は良くなく, 完全切除できるかどうかが予後を左右するが, 再発例が多く予後不良である. 今後の集学的治療が期待される.