抄録
難治性有瘻性膿胸に対して血管吻合を用いた遊離大網充填術を施行した1例を経験したので報告する. 症例は63歳男性. 検診で胸部異常陰影を指摘し, 近医にて右上葉アスペルギルス症の診断で右上葉部分切除術を施行された. 術後に有瘻性膿胸を合併し広背筋弁充填術が施行されたが改善は認められず, 当院紹介, 入院となった. 胸腔鏡検査で壊死した広背筋を認め, 肺尖部では3ヵ所に5~10mm大の気管支瘻が確認できた. 壊死広背筋からは多数のアスペルギルス菌塊, 胸水からはMRSAが検出された. 開窓術を施行, 2ヵ月後に根治手術を施行した. 有茎大網弁では肺尖部の瘻孔を覆うために必要な十分量が得られず, 遊離大網充填術を施行した. 遊離大網充填術は目的の部位に十分量の大網を充填することができ, 有用な術式であると考えられた. 胸腔内に遊離大網充填術を行った報告は自験例が本邦1例目であり, 文献的考察を加え報告する.