日本呼吸器外科学会雑誌
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肺癌術後にSIADHを発症した1例
樋口 光徳管野 隆三藤生 浩一鈴木 弘行塩 豊大杉 純米地 敦長谷川 剛生大石 明雄後藤 満一
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2006 年 20 巻 2 号 p. 180-183

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抄録
症例は71歳男性.既往歴として,高血圧症で降圧剤内服中.検診にて右上肺野に異常陰影を指摘され,肺癌の診断で右上葉切除術,縦隔リンパ節郭清術施行.病理診断は低分化型腺癌で,pT2N1M0 stageIIB.術前から軽度の低Na血症を認めていたが,術後第3病日に見当識障害を伴う著明な低Na血症,血漿浸透圧の低下,ADH高値および尿中Na排泄増加を認めた.副腎機能は正常で,中枢神経疾患もみられず薬剤誘発性も服薬歴から否定的であったため,SIADHと診断した.水分制限と高張食塩水によって徐々に見当識障害と電解質異常は改善し,炎症所見の改善と共にADHも正常化し,軽快退院となった.自験例では,直接的な原因を特定し得なかったが,術前から低Na血症があったことから,潜在的にSIADHの病態が存在し,肺切除による術後の胸腔内の炎症や外科的侵襲が影響して発症したと推測された.
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