抄録
肺切除術における周術期予防的抗菌薬の代表的投与法には術前術中投与と術後投与がある.術後感染症に対する有用性の違いをレトロスペクティブに比較した.当科で肺葉あるいは区域切除術を施行した72例をJSS群とし,第2世代セフェム系あるいはペニシリン系抗菌薬を術後3-4日投与した.同術式施行82例をCDC群とし,執刀30分前にセファゾリン1g,手術が3時間を超える毎に1gずつ追加し,術後は投与しなかった.平均投与総量はJSS群9.3g,CDC群2.9gであった.術後感染症発症率はJSS群12.5%,CDC群13.4%で有意差はなかった.SSIは発生せず,多くが肺炎であった.CDC群のみに手術部位以外を原因とするsepsisを2例認めた.感染症例の臨床像と起因菌,非感染症例の末梢血白血球数とCRPの経時変化に差を認めなかった.両群の術後感染症予防効果は同等であるが,慢性疾患を有する高齢者には術後投与の有用性が期待できる.