抄録
患者は74歳,男性.血痰を主訴に入院となった.既往歴に肺気腫,心筋梗塞,高血圧など複数の危険因子を有し,また呼吸機能検査では高度の閉塞性換気障害と拡散障害を認めた.胸部CTおよび気管支鏡検査で左第2分岐の軟骨輪部から発生する腫瘍と内腔の狭窄を認め,気管支鏡下生検でカルチノイドと診断した.可能な限り呼吸機能を温存する気管支形成術を予定し手術を行った.手術は後側方切開,第5肋間で開胸し葉間より肺動脈,気管支の上下葉分岐部を露出した.腫瘍とともに上下葉分岐部を含む気管支軟骨輪部を切除した.断端に腫瘍細胞の遺残がないことを確認後,直接縫合により閉鎖した.術後,縫合部の気管支開存も良好であり,患者は合併症もなく退院した.現在も腫瘍再発は認めず健康である.本術式は低肺機能肺癌患者に対して選択するべき術式の一つであると思われた.